きら よりやす
| 地域 | 関東 |
|---|---|
| 所属勢力・属性 | 世田谷吉良氏(後北条氏の縁戚) |
| 大名家 | 吉良氏(世田谷吉良氏) |
| 家紋 | 足利二つ引 |
| 主武器 | 太刀 |
| 衣装・甲冑 | 当世具足 |
| 武将タイプ | 名門の格式を保った当主 |
吉良頼康(きら よりやす)は、武蔵国世田谷(東京都世田谷区)の世田谷城を本拠とした吉良氏の当主である。三河の吉良氏と同じ足利一門の流れで、関東では「世田谷御所」とも呼ばれる格式の高い家だった。頼康は小田原の北条氏綱の娘を妻に迎え、勢力を広げる後北条氏と結ぶことで家を保った。
- 世田谷吉良氏は、鎌倉時代に三河吉良氏から分かれた系統とされ、奥州を経て世田谷に移ったと伝わる。世田谷を本拠としたことは応永33年(1426年)に確かめられる
- 頼康は初め頼貞と名乗り、北条氏綱の娘を正室とした。天文17年(1548年)には北条氏康から一字をもらい、頼康と改めたとされる
- 養子の氏朝は北条氏の血を引くとされる。小田原征伐で北条氏が滅ぶと世田谷城は廃城となり、子孫は蒔田氏を名乗って江戸幕府の高家となった
関東にいたもう一つの吉良氏
世田谷吉良氏の祖は、鎌倉時代に三河吉良荘の東条を与えられた吉良義継の系統とされる(長氏の甥・経氏からとする説もある)。南北朝時代、一族の吉良貞家は奥州管領として東北に下った。その後、勢いを失った一族が鎌倉公方に招かれて関東に移り、やがて世田谷に城を構えたと伝わる。
世田谷区によると、世田谷郷が吉良氏の所領になったのは遅くとも永和2年(1376年)以前で、「世田谷吉良殿」として世田谷を本拠にしていたことは応永33年(1426年)に確かめられる。
北条氏との結びつき
戦国時代の関東では、小田原の後北条氏が急速に力を伸ばしていた。頼康は初め頼貞と名乗り、北条氏綱の娘を正室に迎えた。天文8年(1539年)にはすでに結婚していたとされる。天文17年(1548年)には北条氏康から「康」の字を受けて頼康と改めたという。
足利一門という家柄を持つ吉良氏を縁戚に取り込むことは、北条氏にとっても関東での権威を高める意味があった。頼康はのちに武蔵国蒔田(横浜市南区)に移り、「蒔田の吉良」とも呼ばれたとされる。頼康の父は成高とされるが、成高を祖父とする説もある。没年は永禄4年(1561年)12月とする説がある。
養子・氏朝と世田谷の楽市
頼康の跡を継いだのは、養子の吉良氏朝である。氏朝は、遠江今川氏の堀越六郎と、北条氏綱の娘・崎姫の子とする説が有力で、北条氏の血を引いていた。妻には北条氏康の娘(北条幻庵の娘を氏康の養女としたとする見方もある)を迎え、吉良氏と北条氏の結びつきはさらに深まった。
天正6年(1578年)、北条氏政は世田谷新宿に楽市を開いた。毎月1と6の付く日に開かれた市で、これが今も続く「世田谷ボロ市」の起源とされる。
常盤伝説 ― 鷺草に託された物語
世田谷には、頼康の側室・常盤をめぐる伝説が残る。奥沢城主の娘・常盤は、ほかの側室たちの讒言によって追いつめられ、自ら命を絶った。父へ宛てた手紙を白鷺の足に結んで放ったところ、その鷺を頼康が射落とし、その跡に鷺草が咲いたという。史実ではなく説話として伝わるもので、鷺草は現在、世田谷区の区の花になっている。
小田原征伐のあと ― 蒔田氏から高家へ
天正18年(1590年)、豊臣秀吉の小田原征伐で北条氏が滅ぶと、氏朝は上総へ逃れ、世田谷城は廃城となった。その後、氏朝は徳川家康に仕えて世田谷に1120石を与えられたが、のちに返上している。
一族は蒔田氏を名乗り、明暦3年(1657年)には高家に加えられた。三河の吉良家が赤穂事件で断絶したあと、宝永7年(1710年)に吉良の姓に戻ることを許されている(宝永6年とする資料もある)。関東の吉良氏は、三河の吉良氏に代わって吉良の名を江戸時代の終わりまで伝えたのである。
吉良頼康をめぐる人物
ゆかりの地
- 世田谷城阯公園(東京都世田谷区豪徳寺):世田谷城の跡。東京都の旧跡で、土塁と空堀が残る
- 豪徳寺(世田谷区豪徳寺):文明12年(1480年)に吉良政忠が城内に開いた弘徳院が始まり。のちに彦根藩井伊家の菩提寺となった
- 勝光院(世田谷区桜):吉良氏の菩提寺。吉良氏墓所は世田谷区の史跡
- 世田谷ボロ市(世田谷区世田谷・ボロ市通り):天正6年(1578年)の楽市に始まるとされる市。毎年12月と1月に開かれる
この人物をもっと知る本
- 【一般書】谷口雄太『足利将軍と御三家 吉良・石橋・渋川氏』(吉川弘文館・歴史文化ライブラリー):将軍家に次ぐ家格とされた吉良氏を、三河吉良・武蔵吉良の両方から最新研究でたどる入門書
- 【地元の本】世田谷区『世田谷区史 中世編』:世田谷区立郷土資料館で販売。「戦国時代の世田谷」の章で吉良氏の時代をくわしく知ることができる






















